東方見聞録

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コレクションハイライト @福岡市美術館

前々から見てみたかった塩田千春の作品が福岡市美術館に展示されたと教えてもらったので、さっそく見に行きました。

福岡市美術館に行くのは2022年の「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」以来でした。意外と行ってなくてびっくりです。

 

今回のコレクション展は2つの区画があって、ひとつは「福岡市美術館のスターたち」という区画。もうひとつは「美術散歩にでかけよう」という区画でした。

まずは「福岡市美術館のスターたち」。シャガール、ダリ、バスキア、そして草間彌生…。美術館に行くと特別展ばかり見てしまいがちですが、案外近くに有名な絵があるから面白いですね。

ここの区画だとバスキアの《無題》(1984年)が好きでした。犬の絵の近くに「犬の構成物」が列挙されていました。

https://www.fukuoka-art-museum.jp/archives/modern_arts/7270?title=&name=バスキア&year=&kokumei=&genre=&collection=

RADWIMPSの「ソクラティックラブ」という曲に「僕の何が残っていれば 僕なのだろう?」という歌詞があって、それをふと思い出しました。何があれば犬で、何があればヒトで、何があれば「私」なんでしょうね。

 

「美術散歩にでかけよう」の区画には近現代の作品が置かれていて、カプーアなんかもありました。

今回のお目当て、塩田千春の《記憶をたどる船》(2023年)はこの区画に展示されていました。

写真ではよく見ていましたが、実物を見てみると想像していたよりも糸が太くて(ずっと毛糸か刺繍糸が張り巡らしてあるものだと思っていましたが、ロープだったんですね。)、儚さよりも力強さを感じました。毛細血管のような繊細さを想像していたので、木の根のように強く張り巡らされている糸を見て少し安心しました。これなら大事な記憶もずっとそばに置いていられそうです。

同じ区画にあったザオ・ウーキーの《僕らはまだ二人だ-10.3.74》からも目が離せませんでした。冷えた皮膚のような色と赤茶けた色、冷たい青の三色が大きく配置されていて、画面を断つように走る暗い茶色は山のようにも、何かの輪郭のようにも、傷のようにも見えました。

ちなみに、『僕ら』はザオ・ウーキー本人と、制作の2年前に亡くなった奥さんのことを指しているそうです。

「ずっと一緒」とか「永遠に一緒」とかはよく聞きますけど、そんな曖昧な言葉ではなく、『まだ』という言葉が使われているのも気に入ったポイントのひとつでした。奥さんをそばに感じたかったのか、忘れたくても忘れられなかったのか、忘れてしまうのが怖かったのか、自分の命が終わる瞬間を見越して『まだ』という表現を使ったのか。そこは本人にしか分かりませんが、人と人の関係を表すのに絶妙な表現だと感じました。

https://www.fukuoka-art-museum.jp/archives/modern_arts/2621?title=&name=ザオ・ウーキー&year=&genre=&collection=

 

特別展だといくら気に入った作品があってもどこかに帰ってしまうから切ないですけど、その点コレクション展は機会さえあればいつでも見られるのでいいですね。

お昼に食べたカフェの「大濠パンケーキ」も美味しかったです。

おしまい